4,議員定数に関する識者の意見

@議員定数削減論のあり方(旧自治省行政課長・中畠忠能:地方の時代実践シリーズJ」昭和58.10)

地方議会運営の非効率さや地方議会議員の目に余る公費支出があるからといって、直ちに議員定数に発展して良いものではない。そのような思考方法を採っていては、とても民主政治の基本にかかわる制度を論じることはできないと思う。地方議会の議員定数削減間題には、世間の空気に迷わされずに、じっくり考えてみなければならない重大な間題がひそんでいるような気がする。

2)議員が選挙され、在職していることの意義とかメリットが,地域住民にほとんど理解されていない。

 国民は議論を深めることなく、厳しい財政事情を背景としつつ一定の先入観の下に議員定数削減は善と速断するのはいかがなものであろうか。

A議員定数の考え方(全国町村議長会政策審議会幹事会 平成12,.

)議員定数は、まさに議会の組織構成の根幹となる重要な要素を占め、その多少が本会議中心主義・委員会中心主義等議会の審議のあり方、委員会定数、1委員会当たりの委員数等を規定することになる。

2)1委員会当たりの委員数は、本音で議論できる会議の最低構成人数とされている6−7人、そして委員会の数も執行部の部・課の大枠に対応した必要な数を確保したいものである。

)委員会の数の減少はその分1委員会当たりの所管事項が増え、委員の負担を,大きくすると同時に、委員会本来の専門的かつ効率的審議の建前を失わせることとなり、広く住民の意思を反映させるという議会の代表機能の低下を招きかねない

4)議会の代表機能という観点からは、議会は住民の年齢層、性別、職業、各地城等からまんぺんなく選出された議員で構成されていることが望ましく単に人口規摸によってのみ議員定数を論じるぺきでないことは言うまでもない。

5)議員定数は、「行政改革」や「経費節減」といった観点からのみ論じるのではなく、人口、面積や職域等に応じた住民の多様な二一ズや意思を正確に反映させることが大事であり

6)行政が複雑・多様化する中で,専門化、細分化される事件を能率的に自由に討議する委員会が有効、適切に活動することができるように配慮すべきである。

7)議員定数減少のメリット、デメリット(別紙)

 

 

 

 

 

B地方議会への26の処方箋(元全国都道府県議長会議事調査部長・野村稔)

1)議員定数について理論的根拠、あるべき基準が明示されていれぱよいが、残念ながらない。現状は大多数の地方議会が減少させているため、減少が善で、地方自治法に基づき法定数どおりの議員数としているのは、適切でないような印象を与えている。減少によって浮く金額に目を取られ、反対に住民意思の反映機能の低下について検討がおろそかになっているのではないかと心配する。

2)執行機関をチェックする者がいなければ、地域の均衡ある適正な行政、能率的な行政、住民の要望に即応した行政を確保できない。議会の批判監視能力の低下は、最終的には住民自身がマイナスを受ける。

3)残念ながら住民意思の反映は数量化できないので、マイナスを量的に、又は金額で表示できない。議会は減少した議員数でも運営できるから、弊害が生じないような印象を議員や住民に与えている。

4)議員が減れば批判監視機能が確実に低下するのに、それが表面化していないだけである

 

 

C議会改革とまちづくり(北海学園大学教授・森啓)

1)議員定数を減らすことに住民が直ちに賛成するのは、議会を信頼していないからです。議会はあってもなくても同じだと考えているからです。

2)なすべきは議会の活力を高める改革です。議会への信頼の回復です。議員定数を減らしても議会への信頼は回復しません

3)議員数をへらしても、交代してもらいたいと多くの人が思っている「旧来型のどうしようもない議員は」当選して出てきます。定数減で消えるのはまちづくりに必要な議員です

4)経費節減すぺきは不要不急の事業です。行政のスクラップです。…議会の改革の本当の問題は議員が交代することです。交代できる条件を整えることです。


 D議員の定数;実務地方自治法講座(自治省・猪野積)
1)議員数を決定しようとする場合、2つの基本的視点が必要と考えられる。1つは、議会権能の発揮の視点である、議会の重要な機能は、地域の行政需要を的確に反映して、それを行政施策に反映させることと、首長の行政を監視して、これが専横に陥ることのないようにチェックすることである。今ひとつは、行政改革の視点である。…行政改革が従来にも増して必要となっている今日、実効的な行政改革を住民の理解と協力を得て進めていくために、議会自らが率先して痛みをこらえ、定数削減を実行することの意義は大きいといえよう。

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E自治を担う議会改革(山梨学院大学教授'江藤俊昭)

1)行政改革の波の中で、議会も同様な理論での改革が必要だと考えている人たちも多い。こうした人たちに迎合して、いまやさかんに議員定数の削減や報酬の削減が進められている。…それぞれの議会にとって必要な定数はどれくらいか…といった論点を明確にしないまま削減競争に走る姿はむしろ議会の自殺行為に思えてならない。

2)従来は、議会は多様な意見を吸収し、様々な視点から議論する場であるがゆえに、「相当」の人数が必要であるという理解もある。しかし、多様な意見の集約は、いまや住民参加でも十分可能であるし・・・

3)首長サイドのパワーセンターと並ぶもう一つのパワーセンターを成立させるためには、討議できる人数が必要となる。

4)試案として提示すると、本会議中心主義の議会では、6-10人程度、委員会中心主義の議会では6-10人×常任委員会数、したがって3常任委員会だとすれば、18-30人ぐらいが妥当となろう。

 

5.最後に地方分権改革で議会の権限、役割が拡大したことを認識すべき。議員定数は、単なる経費節減の面からでなく、地方分権時代に対応した議会の役割、議会蓮営のあり方をトータルに検討する中で、議員報酬等も含めて住民とともに考えていくべき。

 

 

<資料>

議員定数減少のメリット・デメリット

議員定数に関し、メリット・デメリットについては、次のことが言われている。

(議員定数減少メリット)

○意見がまとめやすく、従って、議事が簡潔に効率的に進められる。

○減少した議員数で議会運営がなされており、むしろ審議時間が短くなり効率的な運営ができる。

○議員定数を減らせば、選挙において従前より多くの支持を必要とすることになり、それだけ広域的なものの考え方をするようになる。

○議員定数を削減すれば、経費節減になる。

○行革として、執行機関も経費節減をしているのだから、議会も行革の一環として減少すべきである

[議員定数減少デメリット]

○議会は地方公共団体の意思決定機関であり、議員定数を減らす議論よりも、むしろ議員の質をいかにして高め、民意の反映をどうするかの議論のほうが大切である。

○住民を代表して審議決定するのだから、全住民を代表するにふさわしい数が必要である。従って、少数精鋭よりもむしろ多数精鋭であるぺきである。

○少数では、行政との「馴れ合い」問題が起きやすくなる。

○議員定数減少による経費の削減と議会の監視機能、住民意思の反映等の両面を比較検討すぺきである。

○歴史的にも権限的にも、さらに住民の自治意識の点においても異なっている諸外国の議員定数を持ち出して、単純に議員定数を比較することは、はなはだ危険な発想である。

○安易な減少は常任委員会活動を沈滞させ、議会審議を空洞化させる。

○少数では、質疑、質問もほとんどなく、議会としての役割を果たし得ない。

○議員定数を削減すれば、現職議員の強みが増し、若年層、女性の進出が難しくなる。各界各層の議員構成にはならず、議会が停滞する原因にもなる。

 

[その他]

○公務員の定数・給与の適正化と、公選により選任され、住民意思を行政に反映する代議機関を構成する議員の定数とを同列に論ずることはできない。

○一部の議員のモラルや議員活動の問題を即議会全体の間題として取り上げ・議員定数を論ずるのは、議会制度を危険に陥れる恐れがある。

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